初めて東洋医学による鍼灸治療を受ける方へ  問診について

2026年08月13日 10:35

東洋医学の問診では、いろいろなことを詳しくお聞きします

― なぜ、こんなにいろいろ聞くの? ―

初めて東洋医学による鍼灸治療を受ける方は、 「どうして痛いところ以外のことまで聞くの?」 と思われるかもしれません。

この記事では、東洋医学の鍼灸で、なぜ問診の際にいろいろなことをお聞きするのか、その理由をご紹介します。

目次

1.なぜ、こんなにいろいろ聞くの?
2.問診は「手がかり集め」
3.「表・裏」「寒・熱」「虚・実」というものさし
4.症状だけでなく、普段の生活も大切です
5.お子さんの場合は、さらにさかのぼって伺います
6.来院前のチェックリスト

1. なぜ、こんなにいろいろ聞くの?

病院では、血液検査や画像検査などから、数値や画像に表れた情報をもとに身体の状態を確認し、診断や治療方針を考えます。

一方、東洋医学では、現在のような検査機器がなかった時代から、人の身体に現れるさまざまな変化を観察し、長い年月の経験や理論を積み重ねながら、身体の状態を捉える方法が発展してきました。

そのため、東洋医学の鍼灸では、症状そのものだけでなく、その症状が現れるまでの経緯や、どのような条件で変化するのかを詳しく伺います。

例えば「腰が痛い」という症状一つとっても、

・仕事で疲れた夕方に重だるくなり、横になると楽になる方
・朝の動き始めが一番痛く、動いているうちに楽になる方
・お風呂に入ると楽になる方
・逆に温まるとズキズキして、冷やしたほうが楽な方

というように、症状の現れ方や身体の反応は、人によって大きく異なります。だからこそ、「いつ・どんなときに・どのように変化するのか」を大切にしています。

2. 問診は「手がかり集め」

東洋医学の問診は、探偵が手がかりを集める作業に少し似ています。

「腰が痛い」が最初の手がかりだとすると、そこから、

『いつ頃から? どのように始まった? 疲れると? 休むと? 動くと? 温めると? 冷やすと?』

と、一つひとつ情報を集めていきます。

さらに、症状が出る少し前にさかのぼり、

・仕事が忙しくなった
・睡眠時間が減った
・生活リズムが変わった
・運動不足になった、または急に運動を始めた
・食事が不規則になった
・強いストレスがあった
・スマートフォンを長時間使うようになった

といった変化がなかったかも伺います。「まさか、これが関係あるの?」と思うようなことでも、症状が出てきた経緯を考えるうえで、手がかりになることがあります。

もちろん、一つの出来事だけで原因を決めつけるわけではありません。さまざまな情報を組み合わせながら、現在のお身体の状態を立体的に捉えていきます。

3. 「表・裏」「寒・熱」「虚・実」というものさし

集めた情報をもとに、東洋医学では身体の状態をいくつかの「ものさし」で考えます。代表的なものが、

‣表・裏 ― 症状が身体の比較的浅い部分にあるのか、深い部分にあるのか
‣寒・熱 ― 冷えの傾向があるのか、熱の傾向があるのか
‣虚・実 ― 身体の力が不足している傾向なのか、症状を起こしている要素が強く現れている傾向なのか

の3つです。これらのものさしを組み合わせながら、身体の状態を考えていきます。

例えば、「冷えると悪化し、温めると楽になる」のか、その逆なのか。「疲れると症状が強くなり、休むと楽になる」のか、「動いているほうが楽になる」のか。こうした身体の反応を確認しながら、現在のお身体の状態を考えていきます。

そのため、同じ「肩こり」「腰痛」「膝の痛み」であっても、問診で伺った内容によって、身体の見方や施術の組み立てが変わることがあります。

4. 症状だけでなく、普段の生活も大切です

症状以外にも、睡眠、食欲、お通じ、冷えやすさ、暑がりかどうかなど、普段のお身体の状態を伺うことがあります。また、生活リズムや食事、運動、仕事、人間関係についてお聞きすることもあります。

身体は、痛いところだけで成り立っているわけではありません。日々の生活の変化と症状を合わせて考えることで、現在のお身体の状態をより立体的に捉えることができます。

「症状とは関係なさそう」と思われるような質問にも、東洋医学の問診では意味があります。

5. お子さんの場合は、さらにさかのぼって伺います

ここまでは主に大人の問診についてご紹介しましたが、お子さんの鍼灸では、現在の症状や生活だけでなく、お母さまの妊娠中や出産前後のことまでお聞きすることがあります。

例えば、

・お母さまのもともとの体質や体力
・妊娠中のお身体の状態、食事や飲み物
・妊娠中の強いストレスや精神的な負担、生活環境
・出産の経過
・出産後の月経や体調の変化、生活環境

などです。また、お子さん自身についても、いつ頃から症状が出てきたのか、その頃に生活環境の変化がなかったか、睡眠や食事、排便などに変化がなかったかを伺います。

これは、お子さんの症状の原因を妊娠中の出来事だけに結びつけるという意味ではありません。特に小さなお子さんは、ご本人から症状や身体の変化を詳しく聞くことが難しい場合があります。そのため、成長の経過やお母さまの妊娠中・出産前後の状態、家庭や保育園・学校などの生活環境も含め、できるだけ多くの手がかりを集めるためにお聞きしています。

6. 来院前に、少し思い出してきてください

初めて来院されるときに、すべてを正確に覚えている必要はありません。「たしか、こうだったかな?」という程度でも大丈夫です。当てはまるものだけ、気軽に振り返ってみてください。

【症状について】

・その症状は、いつ頃から、どのように始まりましたか?
・症状が出る1か月ほど前に、何かいつもと違う出来事はありませんでしたか?
・疲れる・休むと、どうなりますか?
・動くと楽になりますか? それとも悪化しますか?
・動き始めがつらく、動いているうちに楽になることはありますか?
・お風呂に入ったり、温めたり、冷やしたりすると、どうなりますか?
・押されたり触られたりすると、楽になりますか?
・食事や排便、生理の前後で変化しますか?
・夜更かしをすると変化がありますか?

【普段の生活について】

・生活リズム、睡眠、食事、運動量に変化はありませんか?
・仕事が忙しくなっていませんか?
・いつもよりストレスを感じることはありませんでしたか?
・スマートフォンやパソコンを使う時間が増えていませんか?

【お子さんの場合】

・お母さまのもともとの体質や体力について、何か思い当たることはありますか?
・妊娠中のお母さまの体調や、食事・飲み物などについて思い当たることはありますか?
・妊娠中の精神的な負担や、生活環境の変化はありませんでしたか?
・出産前後や出産後のお母さまの体調、月経などに気になる変化はありませんでしたか?
・お子さんの症状が出始めた頃、生活環境に変化はありませんでしたか?

すべてを思い出せなくても大丈夫です。はっきりした出来事でなくても、「何となくいつもと違った」「以前より疲れやすかった」など、普段との違いを感じたことがあれば、遠慮なくお伝えください。

一つひとつの小さな情報が、お身体の状態を知るための大切な手がかりになります。東洋医学の鍼灸では、そうした手がかりを一つひとつ集めながら、その方のお身体の状態を捉え、施術につなげていきます。気になることや思い当たることがあれば、どんなことでも遠慮なくお話しください。

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