通院が途切れた患者さんから学んだこと

2026年07月25日 08:05

通院が途切れた患者さんがいました。

「もっと私にできることはなかっただろうか。」

その経験を振り返るたびに、そう考えます。

先日、アトピー性皮膚炎で来院された方がいらっしゃいました。

皮膚は乾燥が強い、いわゆる「カサカサタイプ」で、全体的に体力もかなり落ちている状態でした。遠方から通院されており、お話を伺う中でも、通院そのものが大きな負担になっていることを感じていました。

【カサカサタイプの見立て】

東洋医学では、このような乾燥の強いタイプでは「血(けつ)」が不足し、その結果として「風邪(ふうじゃ)」が生じやすくなると考えます。ここでいう風邪とは、一般的な風邪(かぜ)のことではなく、かゆみや皮膚症状を引き起こしたり悪化させたりする病因の一つです。

血には身体や皮膚を潤す働きがあります。血が不足すると皮膚は乾燥し、乾燥した状態では風邪が生じやすくなります。砂漠では乾燥によって強い風が吹くように、身体の中でも乾燥が風を生み、かゆみを慢性化させると考えられています。

血虚は、目の使いすぎ、夜ふかし、精神的ストレス、運動不足、食生活の乱れ、消化器の弱りなど、さまざまな要因が重なって起こります。特に臨床では、暗くなってから長時間目を使う生活習慣が関係している方を多く見かけます。

この方も皮膚には艶がなく、血色もあまり良い状態ではありませんでした。アトピーが長期間続くことで、身体を潤し養う力である「血(陰)」が消耗し、それが慢性的なかゆみにつながっているように感じました。

【少しずつ積み重なる変化】

このような状態では、改善には時間がかかることが少なくありません。

治療頻度は、体調や症状の重さに応じてこちらから提案するようにしています。この方の場合は本来であれば週2回程度をお願いしたい状態でしたが、通院の負担を考え、最低でも週1回は通っていただきたいことをお伝えしました。とはいえ、最終的にどのくらいのペースで通うかはご本人の判断に委ねる部分でもあり、実際には月2回ほどの通院となりました。

それでも治療を続ける中で、皮膚のカサつきや粉を吹く状態は少しずつ落ち着き、潤いも出始めていました。その変化をお伝えしたのですが、ご本人としてはあまり実感がなかったようで、私自身も「うまく伝えられていない」という感覚が残っていました。

【変化を共有することの大切さ】

この経験を振り返る中で、私が改めて感じたことがあります。

臨床では、治療による小さな変化を患者さんと一緒に確認し、共有できるようになると、その後の改善が進みやすいように感じています。

もちろん、これは「患者さんが変化を感じなければ治らない」という意味ではありません。小さな変化は、自分では気づきにくいことも少なくありません。

だからこそ、その変化を分かりやすく伝え、一緒に確認し、積み重ねていくことも治療者の大切な役割なのだと思います。

一方で、治療者だけが努力すれば良いというものでもないと感じています。

アトピー性皮膚炎は、鍼灸だけで改善する病気ではありません。睡眠、食事、目の使い方、ストレスとの付き合い方など、日々の生活そのものが身体をつくっています。

患者さん自身が身体に起きている小さな変化に目を向け、「今日はかゆみが少し軽い」「よく眠れた」「皮膚が少ししっとりしてきた」といった変化を感じながら生活を整えていくことは、治療と養生を続けるうえで大きな力になると感じています。

治療者が身体の変化を見極めて伝えること。そして患者さんがその変化を受け止め、日々の養生に活かしていくこと。その両方が揃って、少しずつ身体は良い方向へ向かっていくのだと思います。

【結果】

結果として、この方は来院されなくなりました。

本当の理由は分かりません。通院の負担もあったでしょうし、生活環境にもさまざまな事情があったのだと思います。

しかし、皮膚のカサつきや粉を吹く状態は改善し始めていただけに、とても残念でした。

私自身も長年アトピーに苦しんできた経験があります。だからこそ、「なんとか力になりたい」という思いで向き合っていました。

アトピーは、治療だけではなく、生活習慣を整えながら年単位で身体を立て直していく病気だと実感しています。すぐに劇的な変化が現れることは少なく、小さな改善を積み重ねていくことが大切です。

だからこそ、その途中で通院を続ける支えになれなかったとすれば、それは私にも改善すべき点があったのだと思います。

【この経験から学んだこと】

私は、どうすれば良かったのだろうか。

皮膚の状態だけではなく、睡眠や疲労感、かゆみの時間帯、生活習慣の変化など、改善を実感できる材料をもっと一緒に確認していくべきだったのかもしれません。

「変化を伝える」のではなく、「一緒に変化を見つける」。

今回の経験を通して、この言葉の意味を改めて考えるようになりました。

患者さん自身が自分の身体を理解し、自ら養生できるようお手伝いすることも、治療者の大切な役割です。

今回の経験は悔しさの残るものでした。しかし、この経験を無駄にせず、次に同じような患者さんと出会ったときには、より良い治療ができるよう学び続けていきたいと思います。

治療は、治療者だけが頑張るものでも、患者さんだけが頑張るものでもありません。お互いが同じ方向を向き、小さな変化を積み重ねていくことで、身体は少しずつ変わっていきます。

今回の経験を活かし、一人ひとりの患者さんと小さな変化を共有しながら、ともに回復を目指せる治療家でありたいと思います。

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