西洋医学は、命に関わるケガや急性疾患の治療において非常に優れた力を発揮します。一方で、慢性的な症状や体質の問題に対しては、薬によって症状を一時的に抑えることが中心となりやすく、根本にある不調には手が届かないまま体の中に蓄積されていくことがあります。
それはいわば、散らかった部屋を片付けるのではなく、押し入れに詰め込んで表面だけきれいにするようなもの。詰め込まれたものは消えたわけではなく、やがてより大きな病気として現れてくることがあります。
そもそも疲労とは、自分で自覚できるものとは限りません。感じる疲労と、感じない疲労があります。「火事場の馬鹿力」を出しているときは疲れを感じませんが、出し終わったとたんにどっと疲れが押し寄せてくるように、体は限界を超えていても気づけないことがあるのです。疲れたと感じなければ疲労は取れません。骨が折れているのに痛みを感じなければ治療できないのと同じで、疲労も自覚されてはじめて回復への道が開けます。
疲労は必ずしも「疲れた」という感覚だけで現れるわけではありません。理想的なのは「眠たさ」として自覚されることで、疲れれば疲れるほど早く眠くなり、深い眠りにつける状態です。しかし疲労が過度になると、疲れているのに眠れなくなります。疲れているのでジッとせざるを得ないのに、眠れない。この状態が続くとやがて体は「痛み」などの別の症状を出して、無理やり動きにブレーキをかけようとします。
疲労があるのに疲れたと感じず、元気だと感じてしまう状態こそが、あらゆる病気の温床となるのです。
東洋医学・鍼灸治療では、こうした自覚されていない疲労や体の奥に積み重なった不調を丁寧にかき出し、整理していくことを大切にしています。免疫力を高め、体が本来持っている自然治癒力を引き出しながら、押し入れに詰め込まれた不調を少しずつかき出していくイメージです。押し入れに長年詰め込んできたものを整理するのですから、当然それなりの時間がかかります。「あまり変わっていないかな」と感じる時期があるかもしれませんが、その間も体の中では確実に変化が起きています。治療を途中でやめてしまうことは、せっかくかき出しかけたものを再び押し込んでしまうことになりかねません。変化を焦らず、施術のたびに体と丁寧に向き合い続けることが、本当の意味での回復への近道です。続けた先に、これまでとは違う体の軽さや変化を必ず実感できる日がきます。